呟きたい

主にタイトルが示していることをしたい。色々妄想しながら、ここに自分が考えてることをぶち込めたい。よろしく

プロローグ2

「ほらよっ」おじさんが虎響に水のペットボトルを渡した。「しかし、日本みたいにはいかないねー」ちょっと嫌気のある顔で言った。「普通なら自動販売機で一人で買えるのに。わざわざ水ぐらいで店に行くのはめんどいことだ」おじさんは虎響のそばの席に腰を下ろした。


虎響は自分の手にあるペットボトルのラベルをじっと見つめながら、キャップを外した。それからボトルが空になるのに時間はかからなかった。虎響がぐいぐい飲むのを見て、おじさんは驚いた顔を見せてくれた。彼は昨日の夜、病院から出てからB2ゲートに着くまでには何も飲んではいなかった。それにまして、空港に着くまでのバスのせいで滝のように汗をかいていた。飲んでいる水は体のあらゆる細胞を生きがいらせているような感じだった。


「よくあんなに飲むな」おじさんが呟く。おじさんはすぐに暇になったそうでスマホを出して、日本チャンネルのニュースを見始めた。目を横にすると、ニュースはあの事件のことだと見えた。「どうしてわざわざアテネまで来て殺しをするのかな。もうこの世界は狂ってる。響治や美鈴が殺されてもううんざりだ」思わず彼は小声で口に出していた。そのすぐ後、虎響にごめんと誤った。


おじさんは虎響の実のおじさんだったのだ。虎響の父、響治の弟なのに彼は家族の死を悲しむ気配はなかった。前に父から聞いたことだったが、高校時代にはかれと父はとても仲が良かったそうだ。ところが、年上の父が高校を卒業し大学へと進学すると、おじさんは家族ともめ事をすることになった。はじめは小さい争いばかりで生活が不愉快になるだけだったが、月日が流れるうちにもめ事は大きく成長していった。やがて家族の仲が悪化しすぎておじさんが家出をしたらしい。あの時、父はそんなに気にしてはなかったとは言ったが、後で連絡を取るべきだったと後悔をしていた。それ以来、おじさんと父は二十五年後の今までには会うことはなかった。おじさんがどうしてもめ事を始めたのかは、伝えてくれなかった。


虎響は自分の家族を亡くして悲しんでいるのかわからなかったが、おじさんのことがうらやましかった。そんなにすごい被害が起きても、感情を顔には出さなく平然と生きれるところがうらやましく、尊く思った。自分も感情は出してはいなかったが、逆に表情が無になっていた。それを自覚していても、何をどうすればわからなかった。だから今のところは、おじさんの話を聞き、言われるとおりにに動いた。


「大丈夫。俺は丈夫だから、事件のこと話ていいよ」虎響は優しくて強く言おうとしたが、かすかな声が出てきた。
「そうか。俺も事件のことで頭がいっぱいだ。頭を整理する必要がある」と、飛行機が着陸する姿を遠い目で見ながら言った。「三日前だったよな、俺とお前と家族がパルテノン神殿まで登っていったのは」小さく頷いた。虎響はもう三日間がたつのが実感できてはいなかった。「確か、はじめはみんなでてっぺんまで行ったが、俺とお前がトイレに行ったんだよな。その最中事件は起きて、俺たちが戻ってきたら死体が六体」さすがに言い過ぎたと思ったのか、おじさんはこっちを向き、表情が変わってないことを確認し、また語り始めた。「宮松家が四人、そして殺人を犯したと思われている二人の日本人。武器はピストルの44マグナム。これどう考えてもおかしいだろ。どうしてわざわざ日本から飛んできて、殺害しなくてならないんだ。普通なら日本から帰ってくるのを待つか、ギリシャに行く前にやるじゃないか。あと俺とお前をきれいに抜いてやったのはなんてことだ。おれは、とても偶然だと思えん。だってあの二人は自殺したんだぞ、宮松家を集中的に殺害するのに宮松家のうち何人が登場するのか知る必要があるだろ。第一、みんながパルテノンに行くのが保証できん」おじさんはむかつく一方だった。「あああ、もうむかつく。頭の整理はもうやめだ」自分のペットボトルを強く握りしめながら言った。


そのあと、彼はスマホをにらむようにニュースの動画を見ていた。しばらく沈黙が続いた。


確かにおじさんが言ってることはあっていた。なんで宮松家が集中的に殺されたのか、どうしてギリシャで殺害を行う必要があったのか。虎響はさっぱりわからなかった。でも、今はそんなに興味はなかった。今は早く日本へ帰りたかった、そして自分がよく見おぼえがある東北の風景が恋しくなってきた。そのためには、成田空港行の飛行機のコールを待つばかりだった。


やがてそのコールが空港中に流され、自らいやな気分になったおじさんと二十歳になったばかりの少年は元の国へと戻ろうとしていた。

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